(毎日新聞 2023/06/28)
 北朝鮮国営の朝鮮中央通信は28日、北朝鮮による日本人の拉致問題について「(北朝鮮の)誠意ある努力によって、完全無欠に解決された」とする外務省日本研究所研究員の論評を伝えた。拉致問題解決へ向けて北朝鮮との対話に意欲を見せている岸田文雄首相に対し、改めて北朝鮮の立場を強調した。

 論評は27日付で、日本政府が29日に国連で拉致問題に関するシンポジウムを開催するのに合わせた形。

日本研究所研究員は論評で、日本が望む形での解決は「実現不可能」だと指摘し、これを「旧態依然として国際舞台に持ち出すのは時間の浪費」だと批判。日本政府が前提条件なしで北朝鮮側と対話する姿勢を示していることに触れ、拉致問題の提起はこの姿勢を「自ら否定するのと同じだ」と指摘した。

 また、日本側が拉致被害者全員の帰国を望んでいることを「死者を生かせというむなしい妄想にすぎないことを肝に銘じなければならない」とはねのけた。

 岸田首相は5月、日朝首脳会談の実現に向け、「(首相)直轄のハイレベルで協議を行っていきたい」と表明した。これに対し、北朝鮮のパク・サンギル外務次官がその2日後、「日本が新たな決断を下し、関係改善の活路を模索しようとするなら、朝日両国が会えない理由はない」との談話を発表。「日本は行動で問題解決の意思を示すべきだ」などと対話に前向きともとれる姿勢を示していた。一方でパク氏は「既に全て解決した(日本人)拉致問題」とも言及し、従来の立場を崩さなかった。【ソウル日下部元美】


(産経新聞 2023/06/28)

松野博一官房長官は28日午前の記者会見で、北朝鮮が日本と米国などが拉致問題に関する国連シンポジウムを共催することを非難し、拉致問題は「完全に解決済み」と表明したことに対し、「拉致問題は既に解決されたとの主張は全く受け入れられない」と反論した。

松野氏はさらに「拉致問題は、ひとときもゆるがせにできない人権問題だ。引き続き全ての拉致被害者の1日も早い帰国を実現するべく、全力で果断に取り組んでいく」と重ねて強調した。

シンポジウムは29日にオンライン形式で開かれる。拉致問題担当相を兼務する松野氏のほか日本人拉致被害者家族や米国、韓国などの国連関係者が参加する。