(毎日新聞/YAHOO 2025/04/10)
 東京・池袋を「中華街」として打ち出そうとする構想が今から17年前にあった。地元商店会や政治団体などの反発で構想自体は下火となったが、その後もJR池袋駅西口(豊島区)では中国系の店が増え続けている。

 今の池袋は、日本人の味覚に合わせた中華料理店が並ぶ横浜中華街のような姿ではない。

 ここに広がりつつあるのは、主に中国人を相手にするスーパーや旅行代理店、料理店などが数多く点在する、中国人のための街である。

 ◇日本人患者は5%の医院

 3月下旬の午後。西口から徒歩5分ほどの「池袋三好医院」の待合室で10人ほどの患者がソファに座り、診察の順番を待っていた。

 来日して半年という中国人の男性会社員(28)が院内の診察室に入ると、院長の馬俊才さん(34)は中国語で症状を尋ねた。

 2022年に開設したこのクリニックは医師も看護師も中国人で、院内でのやり取りは中国語で行われる。日本人の患者は5%に過ぎない。

 「日本で中国人のための病院をつくろうと始めた。患者はさらに増えていくはずだ」。17年に来日し、日本と中国で医師免許を持つ馬さんは話す。

 ◇中華街構想、発案者の思い

 こうした中国人向けの店は池袋駅西口、正確に言えば三つある出口の一つである「西口(北)」の周辺に広がる。主に中国人を顧客とする不動産会社や旅行代理店、美容院、法律事務所、自動車学校の事務所もある。

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 ほとんどの店舗は見た目では中国系とは分からないが、行き交う人の多くが発するのは中国語だ。

 「池袋に行けば、生活のために必要なすべてがそろっている。本国と何も変わらない」と中国人留学生の女性(26)は言う。

 こうした街の変化について、中華街構想の発案者である中国出身の広告プロデューサー、胡逸飛さん(62)は「状況は大きく変わりましたね」と感慨深く話す。

 08年1月、池袋に「東京中華街」をつくる構想を発表したが、地元商店会からは強い反発を招き、政治団体からも抗議を受けて構想は失敗に終わった。

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▲池袋駅西口にある中華食材店「陽光城」の前で「東京中華街」構想に抗議する政治団体の人たち。2008年に構想が発表されてから、こうした抗議運動はたびたび起きた=胡逸飛さん提供

 ただ、胡さんによれば08年当時、池袋駅周辺に100軒ほどあった中国系の飲食店や事務所などは、今は300軒を超える。

 豊島区に住む中国人も08年の8657人から1万6360人(25年)と倍近くに増えた。

 「中国人がいることが当たり前となり、地元商店会の反発もほとんどない。今は国際化の時代。日本人と中国人が一緒に楽しめる街になればいい」と胡さんは話す。【川上晃弘】