「何でも韓国起源」と言い張る困った隣人の珍妙な論理
(週刊ポスト2011年10月28日号 2011/10/17)
寿司、桜、歌舞伎、そして今度は「禅」が標的に
まァ、どこの国でも組織でも、身びいき、我田引水、自意識過剰はあるものだ。「我が国は世界に冠たる素晴らしい国だ」と自尊心を持つのは悪いことではない。とはいえ、彼の国の場合はちょっとスケールが違う。目くじらを立てる話ではないが、こういう国だと知っておくことは無駄ではあるまい。
日本に対するコンプレックス
「ウリジナル」という言葉をご存じだろうか。
ハングルで「我々の」という意味の「ウリ」と、起源を表わす「オリジナル」をくっつけた造語で、要するに「○○は、我が韓国(朝鮮)が起源だ」とする主張を指す。ただし多くの場合、この言葉には冷笑や揶揄の響きが含まれる。
なぜかというと、韓国では、他国の人間が聞けば首を傾げるか吹き出してしまう馬鹿げた「韓国起源説」が次から次へと“発明”されており、そうした事情を知る世界中の人たちから呆れられているからである。
特にウリジナルの標的にされるのは日本だ。彼の国が日本に並々ならぬライバル心と敵意を持っていることは、今さらいうまでもないだろう。そうさせてしまった不幸な歴史、我が国の問題もあったのかもしれないが、本稿ではそれは論点ではない。
とにかく、彼らは手当たり次第に日本の文化、文物、産品などを「実は韓国が起源で日本は真似た(輸入した)だけ」と主張する“論争”を仕掛けることに血道を上げている。
試しに過去に出たウリジナル説を集めてみると、出るわ出るわ。おもしろいのでその一部は別表にまとめたが、柔道、剣道、合気道、空手といった日本古来の武道に始まり、歌舞伎、和歌、華道、演歌といった文化・芸能、海苔、納豆、寿司、味噌、豆腐などの料理・食品、ソメイヨシノや秋田犬といった動植物、挙げ句には日本語や仮名文字、「日本」という国名までがウリジナルだというのである。
先にこれだけ書いてしまうと、かえってインパクトが薄れてしまうかもしれないが、最近また新たなウリジナルが出た。
日本の「禅」は偽物だから、韓国仏教の特徴である「チャムソン(参禅)」を世界に広めるべきだという主張である。アジア関連ニュースを扱う『サーチナ』によれば、これを唱えたのは韓国仏教界の重鎮であるチャスン・曹渓宗総務院長で、広報活動のために訪れたフランスで各国記者団に対して、「日本語の『禅』の用語は間違っており、チャムソンを世界に広く知らしめたい。チャムソンが日本の禅と間違って紹介されており、自尊心を傷つけられた」などと語ったという。
韓国メディアは大喜びで構想の言葉を報じた。またいつものウリジナル説が流布されるパターンである。
念のため、学問的、歴史的に最も正しいとされている定説を紹介しておくと、いうまでもなく大乗仏教の一派である禅は日本でできたものではない。開祖として有名な達磨はインドで生まれ、6世紀に中国に渡って禅を確立したとされる。
日本へは平安時代から鎌倉時代にかけて伝わったとされ、来日僧を祖とするもの、大陸に渡った日本人僧を祖とするものなど多くの宗派が生まれ、隆盛した。他の文化がそうであるように、その過程で様々な発展、変化を遂げ、日本独自の禅が形成された。
ここから少し話がややこしくなるのだが、欧米各国では、「ZEN」といえば日本文化だと思われている。それは、日本が東アジアでいち早く近代化を遂げ、欧米で日本ブームが起きるなかで、禅も日本の宗教、文化、そして日本人の精神性の象徴として紹介された経緯があるからである。先に亡くなったアップル創業者のスティーブ・ジョブスが禅にのめり込んでいたことも、よく知られている。
チャスン僧侶の憤懣も、そういうところにあったのかもしれないが、ウリジナル説が絶えない理由は別にありそうだ。
第一に注目すべきは、それらのほとんどが笑ってしまうようなトンデモ説なのに、発言者を見ると名の知れた学者であったり、政治家だったり、今回のような聖職者であったりすることだ。このタイプのウリジナル説は、実は意図的な捏造の疑いがある。
韓国文化や国民性に詳しい産経新聞ソウル支局長の黒田勝弘氏はこう語る。
「しかるべき立場の人や公的機関までがウリジナル説を広めている背景には、いまだに日本を叩くことで愛国者として評価される風潮が残っていることが挙げられます。実際には、韓国にも歴史や文化を真摯に研究している研究者、専門家はたくさんいますし、荒唐無稽なウリジナル説を多くの国民が信じているとは思いませんが、それが流行るのは日本に対する対抗心やコンプレックスが根強くあるからでしょう」
「漢字を読めない世代」が主役
例えば、学者も政府も一般市民も必死になって広めているのが「ソメイヨシノはウリジナル」という説。
韓国文化庁や国立研究所までもが「日本の桜は済州島から持ち出されたもの」と主張し、植物学者が「DNA分析の結果、ワシントンDCの桜も済州島起源と判明した」と発表するや、国中が歓喜に沸いたとういうトンデモ話もある。ただし、これは多くの韓国人が事実だと信じている。
日本の象徴である桜だからこそ、念入りにデマをこしらえるのだろう。
同じ範疇に入るのは「寿司ウリジナル説」だ。慶南大学伝統食生活文化研究院長を務めるキム・ヨンボク氏が唱え始めたとされる説で、「韓国の伝統食品であるパプシッケを真似たものが日本の寿司」という。これがウケて話がエスカレートし、なかには「日本の寿司は第二次世界大戦後に食べられ始めた」と本気でいう有名料理人までいる。
パプシッケとは、魚に麦芽粉をまぶして発酵させた保存食で、米と塩で魚を発酵させる日本の「なれずし」に近い。この手法はむしろ東南アジアで有史以前からあり、日本でも弥生時代には作られていたとされる。魚を保存するために人類が編み出した原始的な知恵であり、いくらなんでもウリジナルではない。
なお、ウリジナル説には醤油や味噌、うどん、日本酒なども含まれるのだが、これらは東アジア一帯で似たような産品が古くからあり、いずれが先か、オリジナルかを論じるようなものですらない。禅と同じで、アジア各地に同じような文化があるのに、欧米で日本のものだけが有名であることに腹を立てた韓国人が、「我が国にも似たようなものがある」というだけでは収まらず、「日本のものは偽物。韓国が本物」と極端に走った話なのだろう。
それにしても、ちょっと文献を調べればすぐにわかる嘘を、いっぱしのインテリが唱えたり、高学歴の国民が簡単に信じたりするのは奇異な現象である。これについて興味深い分析をするのが国際政治学者の大磯正美氏だ。
「一定数の韓国民がウリジナル説を信じてしまう理由の一つに、中年以下の世代が漢字を読めなくなっていることがあると思われます。若い世代になると、自分の名前さえ漢字で書けない人が増えていて、言葉を漢字の意味で理解するという文化は断絶したといっていい状態です。
05年に、韓国公文書館の国家記録院が憲法の原本を紛失していたことが発覚しました。さらに監査で改正憲法の原本が一般書類に分類されていたり、重要書類とされたものの7割以上が紙くずだったり、という不祥事が起きた。原因は、文書保存に関わる職員でさえ漢字交じりの文書を読めなかったのです。
当然、古い文書を読める韓国民は非常に少ない。日本人なら、ちょっとした歴史マニアでも古典や古文書を読めますが、韓国ではよほどの専門家でなければ、ほんの数十年前の文書すら読めるか怪しい。その土壌があるから、捏造された〝新しい歴史〟が簡単に広まっているのだと思います」
一般的に歴史を重んじるとされる韓国だが、そもそも文献に基づく歴史研究は日本ほど盛んではない。ハングルができたのは15世紀で、それまで独自の文字を持たない民族だったこともあり、日本や中国のように研究対象になる文献が豊富にはないのである。
記録がなければ口伝や伝説が真実として伝わりやすいことは容易に想像できる。ウリジナル説によれば、漢字も印刷技術も韓国人が発明したことになっているが、その国で、正しい歴史が記録されていないというのは哀しい皮肉だ。
キリストは韓国人だった
前出の大磯氏は、漢字文化の衰退と並び、ウリジナル説を流行らせた背景として注目すべきは「事大主義」から「自大主義」への転換だという。
「朝鮮半島にはもともと、強い中国に従い、他国を蔑視する『事大主義』があった。それが、冷戦が終わって軍事政権から文民政治に移ったこの20年の間に、経済発展も手伝って、ことさら日本をはじめとする外国を馬鹿にする『自大主義』に転じてしまった。ウリジナル問題も、単に反日世論という域を超えています」
確かに、ウリジナル説は世界に活躍の場を広げている。前述した漢字や印刷技術については、これまた一流の学者や公的機関が大まじめにウリジナル説を唱えている。中国人やグーテンベルクもビックリだろう。
まだまだある。これまた中国起源説が世界で定着している羅針盤は「新羅針盤」が語源でウリジナルとか。「サッカーは我が国発祥のスポーツ」とウェブサイトに掲載した韓国の団体が、世界中から抗議を受けて削除するハメになったという話もある。
人間すら例外ではない。「モンゴル人は韓国人の末裔である」とする根拠不明の一派によれば、「だから、チンギス・ハーンも韓民族だった」となる。
別の一派は、「イギリス人は韓国人の末裔」と主張している。理由は巨石の遺跡とスコットランドの古語がハングルに似ているからだという。
ついには、「イエス・キリストは韓国人だった」とまで言い出すグループが現れ、さすがにこれは韓国内でもほとんど無視されているが、中国の建国伝説である三皇五帝や、日本の天照大神、ヤマトタケルなどは韓国人だと信じている者が結構いるという。
もっと近年の日本人でいえば、東洲斎写楽や十返舎一九、乃木希典、佐藤栄作・岸信介の兄弟などがウリジナルとされている。
まァ、日本でもチンギス・ハーンは義経だとか、キリストは日本で死んだ、などの珍説は確かにあるが、大きな違いは、それを信じる日本人がほとんどいないことである。だから、こういう珍説を耳にしても、モンゴル人もキリスト教徒も笑ってすませる。が、韓国のように名のある人や、多くの国民がそれを主張すれば、大げさでなく国際紛争のもとにもなりかねない。『日本人はビックリ! 韓国人の日本偽史』(小学館文庫)などの著書がある北海商科大学の水野俊平・教授は、ウリジナル説が市民権を得てしまうと、外国との相互理解に支障が出ると懸念している。
「韓国起源説のなかにも根拠のあるものはあります。仏教や儒教、漢字などが朝鮮半島を経て日本に伝わったことは間違っていません。しかし、剣道などの無理な論理も一緒に主張してしまうと、日本では韓国起源説はすべてデタラメと扱われ、逆に韓国内ではどれも同じように根拠かあると思わる恐れがある。最近は漢字が韓国起源だとか、三皇五帝が韓国人だという説が主張され、中国も刺激しています。韓国はすでに国際化した国ですので、身内で喝采を浴びればいいわけではないと自覚すべきです」
こんなレベルの論争はしたくないが、違うものは違うと指摘することも、隣人の愛情なのかもしれない。
どこまで本気? 主な「ウリジナル」一覧
剣道 「日韓併合時に日本から伝来」という通説に対し、韓国の古武術コムドが起源だと反発
柔道 中国発祥の武術が高麗王朝時代に韓国で「ユド」に発展し、その後日本に渡ったと主張
空手 テコンドーがルーツだと主張。実際は空手が韓国に伝わりテコンドーになったとされる
合気道 「始祖の源義光は新羅出身」など各団体が様々な説を主張
相撲 ルーツは韓国の「シルム」という格闘技なのに、ないがしろにされていると主張
忍術 紀元前4世紀頃、伊賀甲賀地方に朝鮮半島から移住した人々が忍者の祖先だと主張
折り紙 韓国の文化だったのに占領していた日本人が自分たちのものとして世界に広めたと主張
歌舞伎 百済人によって日本に伝えられた百済伎楽が歌舞伎など日本の伝統芸能の起源と主張
桜 日本や米ワシントンのソメイヨシノは済州島の桜を改良して繁殖させたものだと発表
豆腐 日本の豆腐が世界的に有名になっているのは由々しき事態。韓国のほうが歴史が古いと主張
寿司 韓国の魚料理パプシッケの模倣というが、19世紀の江戸前寿司が始まりというのが定説
醤油 世界で「醤油は日本製品」と思われているのは間違いで、元祖は監国であると主張
うどん 日本を訪れた朝鮮通信使が韓国の麺「カルグクス」を教えたことが始まりとか
長崎ちゃんぽん 中国の麺料理が韓国・仁川地方で発展し、占領時代に日本に持ち込まれた
漬物 「すべての漬物がキムチの亜流である」という。沢庵もピクルスもみな模倣とか
活版印刷 世界最古の活版印刷を用いた本は朝鮮の『直指心体要説』であると主張
羅針盤 世界で一番最初に作ったのは新羅だと主張。羅針盤の「羅」は新羅にちなんでいるとか
漢方 「韓医学」として世界文化遺産への認定を狙う。中国が猛クレーム
漢字 韓国言語学の複数の専門家が「韓国人の祖先が作った」と主張しているとされる
日本(国名) 韓国読みの「イルボン」が「ニッポン」の起源との説。日本語の起源も韓国語という
サッカー 新羅の王の蹴鞠がルーツ?「起源は朝鮮」とサイトに記した団体もあった
秋田犬 韓国の天然記念物・珍島犬が日本で現地化したものであるとし珍島犬の優位を強調
イギリス人 巨石文明、ハングルとスコットランドの古語の文法が似ているから。韓国でも信じる者はまれ
イエス・キリスト 韓国にキリストがいたことを示す絵画がネットにアップされた
●他にもあるウリジナル説 華道、囲碁、盆栽、和歌、演歌、仮名文字、切腹、日本刀、海苔、そば、日本酒、刺身、味噌・味噌汁、居合、ツツジ、ニシキゴイ、東洲斎写楽、十返舎一九、菅原道真、乃木希典、チンギス・ハーン……

